「不穏」 林 邦良

講評 : 大西みつぐ

 イタリアの鉄道旅行でしょうか。刹那的な出会いは本来スリリングなものです。フレームに飛び込んでは逃げさっていく風景には特別未練もこだわりもない。しかし、だんだんと感傷的になっていくのはやはり「旅」だからでしょう。誰もが帰るべき家を思うことになります。こんな心情がよくにじみ出ています。特に2枚目の青年との目の合わせ方はドラマチックです。窓ガラスに作者も微かに映し出されているのではないでしょうか。