「夜のコンビナート」 前田光郎

選評 : 全日写連関東本部委員 小野崎徹

一時期、夜のコンビナートというか、所謂あの工場萌えというのが流行りました。川崎辺りの京浜コンビナートに夜、船で行って、見学するというのが流行りましたけれども。船から写真に撮るのはけっこう難しいですよね、いつも揺れていて。で、この面白さに気付いた人たちが、夜コンビナートの見えるところから狙って数々の傑作をものにしましたが、この前田さんの「夜のコンビナート」も非常に良い出来だなぁと思います。人間の目では、こんな風に見えない訳ですよね。これは3秒というシャッタスピードによって、煙突から出る排ガスが棚引いています。排ガスを燃やしてる明かりは目に見えても、排ガスは目に見えないんですよね。こんな風に写るということが、矢張りこれは写真でしか出来ない表現だと思います。色彩も非常に控えめな感じで、夜のコンビナートの脈々とした動き、なんとなく蠢くというか、生き物のような胎動を感じますね。プリントの調子も大変良く、良い作品だと思います。(録音テープによる講評を鈴木洋一が要約)。

「夜のコンビナート」 前田光郎