「母の想い」 水野隆子

選評 : 全日写連関東本部委員 中村明弘

大きな水槽を前にして、幼子のかわいい姿を写そうとスマホを構えた母親。その背中が実に美しい。優しさに溢れている。服の白い鳥の模様もリズミカルで、その鳥の向かう先に子ども、その奥にまた人物、さらにその奥に何かの展示物であろうか、これも人っぽい。それらが右奥へ奥へと動きを作っているのが面白い。もちろん、何かに吸いつけられるように見入る子どもの仕草もかわいい。背中の赤い色が、青っぽい画面の中に強いアクセントを作っている。実にタイミングよく写したものだと感心してしまう。母親の持つスマホの画面も見えて、その中の小さな赤色がまたアクセントとなっている。

こんなにいい場面に出会えるのはまさしく「ラッキー」としか言いようがないが、「あっ、いいな」と体が反応したということは、作者の心がこの時すでに「撮る」というモードにしっかりなっていたということだろう。

「母の想い」水野隆子