「 街 」 宗像正人

選評 : 全日写連関東本部委員 中村明弘

街角で撮影したものだが、スクリーンに映し出されたヨーロッパかどこかの街路の映像に、古い映写機自体の像をダブルイメージしたような面白い写真になった。それはガラスに映る虚像や、透視や反射された映像などの複雑な構成によるものではあるが、一枚の薄っぺらな紙でしかない写真が、こんなにも複雑に世界を写し取り、画面に異空間を現出してみせるという面白い可能性を示している。複雑な人間社会の断面をストレートに切りとってみせるのも写真だが、人間の複雑怪奇な深層世界を暗示できるのも写真なのだろう。この写真はそんな異次元にある写真の世界をも覗き見させてくれる。

「 街 」 宗像正人