「春の午後」 平井 康

選評 : 全日写連関東本部委員 中村明弘

静かな春の午後が写しとめられている。桜の花びらが一面に散り敷かれた庭に、作者は思わずカメラを向けてシャッターを切ったという。ところが写真には、優しい陽を受けた白い洗濯物が春の風に揺れる様をはじめ、家人のつつましやかな日常までもが映し出されている。花見に浮かれる世間と隔絶した人の暮らしの美しいありようなものを見る思いがする。カメラとは面白いもので、撮った本人が意識もしなかったものやことが写ってしまうもの。「あっ、いいな」と被写体に素直な心で向かいあえる作者だからこそ、写真の神様が味方してくれたのだろう。味わい深い写真である。

「春の午後」 平井 康