「 饗 宴 」 鈴木裕子

 選評 : 全日写連関東本部委員 中村明弘

何か事柄を伝えるというものでなく、この画面に切り取られモノたちが奏でる美術的、音楽的な気分を感じる作品である。撮影モードを初めてモノクロにしてみたという作者は、そのことによって白と黒とに置き換えられた不思議な世界が見え始めたのだ。

植木鉢に施された水玉模様がまず目に飛び込んでくる。そして、延び広がるような、「とげとげ」や「くねくね」した植物たちが、白の中の黒、黒の中の白と浮き立って、画面全体からある種の気分を醸し出している。 また一つ、作者自身の新しい写真世界の扉を開いた、記念碑的な作品となるに違いない。

「饗宴」 鈴木裕子