「ランチタイム」 宗像正人

選評 : 全日写連関東本部委員 中村明弘

ランチタイム…、一人暮らしのお年寄りが続々と集まってくる。そこは行きつけのラーメン屋だったり、蕎麦屋だったりする。子どもを幼稚園や学校に送り出した後、主婦たちが数人で集まってランチで盛り上がる姿も良く見かける。このおばさんは、自転車で一人やって来た。強い斜光線が当たった黄色の看板とそこに描かれた影のような三つの奇妙な形がおもしろい。つい、どれがおばさんの影だろうかと探してしまうが、その影は見当たらない。その空しさのようなものだけがぽかんと残され、まるでスポットライトに照らし出されたようにおばさんの横顔だけが、暗部の中に浮き上がる。作者独自の感性が捉えた世界は、みごとに「今」を切り取って見せた。暗い画面に原色の数色のみが色彩を与えているのも、日常でありながら異質な空間を感じさせている。

「ランチタイム」 宗像正人