「父と子」 阿部美智子

選評 : 全日写連関東本部委員 中村明弘

室内。子供を両腕に抱えている父親の表情に心がひかれる。隣の部屋から抱えて来たのだろうが、正面からそれを撮ろうとする作者の強さを感じる。薄い毛布に包まれ目をつむり、安心しきったように眠る少年を、父親の大きな両手が胸に引き寄せる。この当たり前の光景がなぜか深く胸を打つ。写真は多くを語らないが、写真を見る側の心次第では、撮影者の想いよりはるかに雄弁に物語ってくれることがある。簡単に見過ごすことのできない写真である。

「父と子」  阿部美智子