「灼熱」 阿部美智子

選評 : 全日写連関東本部委員 中村明弘

炎天下、建築現場で働く全身黒ずくめの男性。少しでも陽射しを防ごうとするのだろう、ヘルメットにも布を巻いている。写真には、作業着のディテールや身に着けた道具類までもが、きっちりと写しだされている。容赦なく日光が当たり、無数の鉄骨や大きなボンベがうだるようだ。その画面の密度感と克明な描写によって、暑さの中でのこの仕事の厳しさというものが強烈に伝わってくる。モノクロ表現にしたことが良かった。この場に立ち止り、カメラを向ける作者の反応も軽快だ。そして、驚くほどに冷静で慎重である。

「灼熱」 阿部美智子