「 夏 」(3枚組) 中村紀子
選評 : 全日写連関東本部委員 中村明弘
風鈴、朝顔棚、プールと、三題噺のように夏を象徴するものを組んでいる。そこのところに無理がなく、力みのない素直な写真を選んだところが、この作品のさわやかさとなっている。②小学校、教室のベランダに葉を茂らせた朝顔の植木鉢が並ぶ。花もいくつか咲き始めた。たわしや如雨露が無造作に置かれ、運動靴が一足だけ横向きに揃えてある。もうじき小さな子が教室から飛び出してくるのかもしれない…。③プールは水をたっぷりとたたえてはいるものの、子どもたちのいる気配はない…。①ただ、いくつかの風鈴の音だけが重なり合って風に乗って流れている。
ごくありふれた夏の光景だが、作者の中には、コロナ禍の夏休みの、例年と違う状況に思いを馳せたものがあるに違いない。このポカーンとした静けさが、何かなつかしく幼い日の夏を思い起こさせてくれる…と、そうとらえてもいいわけである。