「雨の散歩」  齋藤成伸

 選評 :全日写連関東本部委員 中村明弘

 孤高のカタツムリ君の散歩姿にカメラを最大限寄せ、ローポジションでとらえた作品。雨に濡れたコンクリートの上。車こそ通る気配はないものの、いかにも危うげである。遠くの背景との距離がこの空間を生み、カタツムリ君の存在感を高め、「彼のための空間」という感じにまとまっている。ローポジションはこの場合、この小さな生き物の目線でもある。そのことで小さな彼の世界を、いや彼から見たらとんでもなく大きな世界を堂々と独り占めしているような映像に仕立て上げた。自分の背中の殻の中には悲しみがいっぱい詰まっているのでは、と気づく『でんでんむしの悲しみ』(新美南吉/作)という童話を思い出した。