「鼓動」 市野正悟

選評 : 全日写連関東本部委員 中村明弘

 高校の部活の部室だろうか。②がこの作品のベースになり、左右の写真がそれを補足 してイメージを広げていく構成の組写真である。練習中、突然の雨。一斉に部室に避難。濡れたシャツを脱いで一息入れる部員たち。汗臭く、暗い部室の中に交わされる会話が聞こえてきそうだ。 ① ③で足元の濡れのわずかな光をとらえ、②では外からの光を片隅に拾い上げている。三枚それぞれの光の変化が、望まぬ雨の侵入には抗えない青春の胸のざわめきのようなものを感じさせる。作品全体を覆う暗い青緑色は、そんな「青春のため息」なのかもしれない。組写真にしようと明確な意図を持っての撮影。作者の若い感性がうらやましくなる。