「ひょっとこ踊り」 金崎 茂

 選評 : 全日写連関東本部委員 中村明弘

 ようやく涼しくなった秋の夕べ。木立の合間から強い西日が舞台に差し込んでいる。大人が演じる「おかめとひょっとこ」踊りの中に、子どもたちが加わって楽しそうに踊っている。どちらかというと子どもたちに踊りが奪われてしまったようにも見える。おかめとひょっとこが、子どもたちをうまく盛り立てているのだろう。素顔を出して踊る男の子二人の表情が何とも生き生きしていて小気味いい。飛び入り参加でもしたのだろうか、女の子たちの笑顔もこれまた素敵である。その姿は男の子たちとすっかり息が合っているようなのだ。こんな子どもたちを見ていると選者もとても幸せな気分になれる。
 「おかめ」は福を招く神として、「ひょっとこ」は火を守る神として、また二人合わせて家庭円満の神様でもあるという。この閉塞状況にある今日、おどけた表情で人々を笑わせる彼らこそ、閉ざされた壁を打ち破るエネルギーのようなものを秘めていると言えるのかもしれない。斜光線の中、その光と影を生かし、巧いタイミングで踊り手たちの動きと表情をとらえて見事。こんな祭りなら、撰者もぜひとも行ってみたいという気持ちになった。