「夕映え」 渡辺修一郎
選評 : 全日写連関東本部副委員 神尾一
作者のいつもの散歩コースでの撮影だと言う。夕映えに赤く染まるビニールハウスの光の美しさに心惹かれてシャッターを切ったものと思われる。起伏にとんだ波型のビニールハウスが、あたかも夕日を浴びた波頭のようで不思議な風景写真となっている。ただ、この写真を見ているうちに、『はて?この作品の主題は何なんだろうとか?』という疑問が湧いて来た。夕暮れの空気感は確かに映し出されているが、作者は何を表現したかったのか?散漫な印象を与える原因は遠くに見える富士山と、ビニールハウスに乗っかている赤いプラスティック製の籠のせいであろう。富士山は小さく入れても非常に強い印象を与え、視線を奪う。更に朱色の籠はその色によって更に見る者の注意を引き付けてしまう。結果、作者がこの光景の何に心惹かれたのか分からない。富士山をカットして、もっとビニールハウスだけに近寄るか、赤い籠は一部だけを入れるか、撮影時のアングルと、使用レンズの焦点距離の選択に一工夫してみてはどうだろうか?