「日だまり」 大石 薫

講評: 大西みつぐ

 1930年代に活躍した安井仲治の「犬」の写真を彷彿とする優れたモノクローム作品。安井作品は時代への不安を、鉄格子の中から見つめる犬の目に象徴させましたが、このワイ ヤでつながれた犬もちょっと悲しげにこちを見つめています。背後に黒い影が浮かび、孤独感も高まります。作者はそうした生き物の存在に対峙し、自己をも見つめていくような態度で静謐な作品に仕上げています。モノクローム本来の深い味わいがここにあります。