特選 「仕立て屋」 名波秀夫

講評 : 大西みつぐ

 使い込まれたミシンやアイロンに、この仕立屋さんの経てきた時間が象徴されるのはもちろんのこと、現役として現在も活躍している様子が見て取れます。ご主人は眼鏡をはずし、なにやら手紙でも読んでいそう。そうした静かな日々の営みが美しいモノクローム作品として描かれています。ガラスの反射も決して邪魔なものでなく、ひっそりとした隣近所の町の片隅に息づいている豊かな世界を自然に説明してくれています。