「晩 秋」 池田 是伸
選評 : 関東本部委員 中村 明弘
枯れ残ったガクアジサイの花が、まるで金属細工かと見まがうほどの繊細な造形と美しい色彩を持って描写されている。その花に付き添うようにして残った一枚の枯葉の赤く美しい葉裏と黄色に光る葉脈とが画面に彩りを与えている。流れ去る時間の中で、それらが共に一瞬の存在を主張しているかのようだ。ピントの合わせ所も的確で、作者の研ぎ澄まされた素晴らしい感覚を思わせる。暗い背景の中に浮かぶわずかな彩は美しい空間を作りだし、晩秋の静かな奥深い時間をも感じさせる。
「晩 秋」 池田 是伸